こ〜たろ〜 の 「介護放浪記」

福祉・介護の世界で着のみ着のままに放浪中~!息抜き8割、本業2割、でなきゃ続けていけません…。

成年後見制度について

先日、担当するケースで成年後見制度を活用することになりました。

 

昨今、様々な諸事情からこの制度を活用する方が増えていますね。

 

ニュースや番組特集でも採り上げられたりもしますから耳にされてる方もいるかもしれませんね!☝️

 

成年後見制度とは、精神上の障がい(知的障害、精神障害認知症など)により判断能力が十分でない方が不利益を被らないように家庭裁判所へ申立てをして、その方を援助してくれる人を付けてもらう制度です。☝️😃

 

分かりやすくいうと、認知症などで判断能力が衰えてしまった方がいる場合、周囲の方が制度を用いて後見人となり、その方の財産を不当な契約などから守ることができる制度なんですね。😃

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最近では、両親や親戚のため、または年を重ねてこられた方ご自身の「老い支度」として成年後見制度を理解したいという方が増えているようで、地域包括支援センターにも問い合わせがよくあります。

 

少し話はそれますが、仕事上、制度活用までの支援をさせて頂いているのですが、ブログの中で福祉や介護に関する真面目な話をアップする事がほとんどないので、「社会保障制度関連」という大きな枠組みのカテゴリーを作成してみました。

 

今後は、介護保険をはじめとする様々な社会保障制度で、私が関わってきた制度について時折記事をアップしたいと思います。

 

ということで、

 

話を本題に戻します。

 

私自身は、成年後見制度がどういうものなのか頭の中では理解をしていますが、全く知らない方へ分かりやすく説明をさせて頂くにはやはり まだ知識不足が否めません。

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そこで私自身の勉強の一環として、私なりに噛み砕いてここで解説をしてみたいと思います。

  1. なぜ、成年後見制度ができたのか?
  2. 成年後見制度を理解するための3つのポイント
  3. 成年後見人の選任・後見人になれる人となれない人
  4. 法定成年後見3類型の業務内容
  5. その他、成年後見の業務内容
  6. 成年後見制度を利用するメリット・デメリットは?
  7. 法定成年後見人の利用方法は?
  8. 任意後見制度の利用方法は?
  9. 成年後見制度Q&A
  10. まとめ

 

 

なぜ、成年後見制度ができたのか?

日本の歴史を振り返ると,,,

先ず、少し歴史を振り返ってみますと、この成年後見制度が施行される以前は、判断能力が不十分な方のための制度として「禁治産準禁治産者宣告制度」(キンチサンシャ・ジュンキンチサンシャ)というものがありました。

 

これは、判断能力が不十分な方を「禁治産者」として、財産管理などを制限してしまう制度です。たとえば禁治産者になるとその事実が公示され、本人の戸籍に”禁治産・準禁治産”と記載されてしまうので社会的な偏見や差別を生む等の問題が多くあったようなんですね。

 

人権問題は、どの時代、どの国でも歴史的にありますが、この日本でも階級制度があったように人を守る(人権)法律が確立されるまでの歴史が浅いのは日本だけではありません。

 

成年後見制度の始まりは?

この成年後見制度は、平成12年、障がいのある方も家庭や住み慣れた地域社会の中で暮らせる社会にしようというノーマライゼーション、本人の残存能力の活用、自己決定の尊重の理念のもと、本人の財産と権利を守るために、介護保険制度と同時にスタートしました。みなさん、ご存じでしたか?

 

国民の成年後見制度に対する認知度は?

日本の抱える問題「少子高齢化高齢化社会」というの中で「介護保険制度」というワードは、制度がスタートと同時にみなさんもよく耳にされていたと思います。しかし、同時にスタートしたにもかかわらず「成年後見制度」というワードをよく聞くようになったのはここ数年ではないでしょうか?☝️😃

高齢化社会に対する制度対策として、介護保険制度が世間では飛躍的に認知されることとなりましたが、この少子高齢化には見えにくい現実問題がありました。それが介護保険制度と同時に施行された成年後見制度が補う問題です。

 

一昔前、日本にある一般的な家族構成は、家におじいちゃん・おばあちゃんがいて息子や娘夫婦の家族が一緒に暮らす大家族という構成が多くありました。イメージとしては、”サザエさん”や”ちびまるこちゃん”の家族像です。家族みんなで助け合うほのぼのとした昭和の時代です。

しかし、昭和・平成・令和と時代の移り変りとともに家族構成は核家族化し、三世代が一緒に住む世帯から二世代世帯・単身世帯へと変化し、更には少子化が進み親の世代を支える子供の数も減ってきました。

 

このような社会情勢・家族構成の変化の中、高齢になられた方や障がいを持っておられる方に親族など身内がいないケースや遠方に家族がいたりするケースも増えてきました。つまり、身近なところで日常生活に起こるさまざまな出来事をサポートする存在がいない状態のケースです。

 

社会問題として多く採り上げられたオレオレ詐欺振り込め詐欺、悪質訪問販売などは後を絶ちません。サポートが必要な方の身近なところにその存在がいなかったからこそ多発してしまう事件でもあります。また、身内がなく判断能力のない方の入退院手続きや契約・解約行為、さまざまなところで問題が発生しています。こうした社会問題を未然に防ぎサポートが出来るようにする為に生まれた成年後見制度は、活用される方が増えてきたからこそ国民のみなさんに認知されるようになってきたのかも知れませんね。

 

成年後見制度を理解するための3つのポイント

ポイント① 成年後見は「成人」で「判断能力が不十分な人」を守る制度

繰り返しになりますが、成年後見制度とは、認知症精神障害などで財産管理能力を失った方を対象とし、判断能力が不十分なため契約等の法律行為を行えない人を後見人等が代理し、必要な契約等を締結したり財産を管理したりして本人の保護を図るものです。

ポイント② 成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」の2つがある

「法定後見制度」

法定後見は、既に判断能力が不十分な時に、申し立てにより家庭裁判所によって選任された後見人等が本人に代わって財産や権利を守り、本人を法的に支援する制度です。配偶者や相続人が家庭裁判所成年後見人の選任を申し立てることで手続が開始されます。

 

「任意後見制度」

任意後見は、将来、判断能力が不十分となった時に備えるための制度です。ご本人が元気で判断能力があるうちに、将来、自らの判断能力が低下した場合に備え、元気なうちに自分で任意後見人を選任しておき、公正証書で任意後見契約を結んでおくものです。実際に判断能力の低下・喪失となった場合に、家庭裁判所に申し立てることで手続が開始されます。

 

ポイント③ 法定後見制度には、「後見」「保佐」「補助」の3種類がある

法定後見には「後見・保佐・補助」の3つがあります。類型により、後見人等に与えられる権限や職務の範囲が異なります。後見・保佐・補助人(以下、後見人等)には、日用品の購入等、日常生活に関する行為に対する権限はありません。また、本人に後見人や保佐人がつき被後見人や被保佐人となると、医師や税理士などの資格取り消しや会社役員、公務員等の地位を失ってしまいます。その他にも、本人が登録している印鑑登録がある場合は、それも抹消されてしまいます。

 

成年後見人の選任・後見人になれる人なれない人

法廷後見人は家庭裁判所が適格者を選任しますが、任意後見人は本人の任意で選択することができます。つまり、法廷後見の場合は、希望した者が必ずしも選任されるとは限らないんです。また、制度上、以下のような者は不適格とされてしまいます。

 

「法定後見の場合」

 ・未成年者

 ・家庭裁判所で解任された法廷代理人、保佐人、補助人

 ・破産者

 ・本人に対して訴訟をしている人、その配偶者、その直系血族

 ・行方不明者

 

「任意後見の場合」

 ※上記五項目は同じ

 ・不整な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

 

上記を簡単にまとめると、基本的には家族など親族・近親者が行なうのが一般的ですが、これらに該当しなければ、法人でも後見人になる事が可能です。なお、親族・近親者がいない場合は、資格などとは関係なく裁判所の判断によっては後見人候補者名簿などに登録のある弁護士、司法書士行政書士社会福祉士などが選任される場合もあり得ます

 

法定成年後見制度3類型の業務内容

法定成年後見制度の3類型は前述しましたが、具体的に業務内容は対象者の判断能力によってそれぞれ権限が異なります。成年後見人は対象者の判断能力が著しく低下した場合に選任されるので、権限の範囲は最も広くなります。しかし、対象者の判断への同意に権限がないのは、同意は対象者が主体となって行動することを予定していると捉え、成年後見の場合そのような自体が想定されないためです。

 

「後見の対象となる人」って?

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後見は、日常の買い物が全くできない等の状態、つまり判断能力が全くない方が対象です。後見人には、被後見人の財産管理や法律行為を代わりに行う代理権取消権が与えられます。取消権とは、被後見人が行った法律行為を取り消すことができる権限です。基本的に、成年後見人は、成年被後見人の行う取引行為全般について取消権・代理権がありますが、場合によっては成年後見監督人を選任しなければならない場合もあります。

 

「保佐の対象になる人」とは?

保佐は、日常的な買い物等は一人でできるけれど、たとえば不動産を売買する等の重要な財産行為を行う際には、”誰かの支援があったほうが良い方”が対象です。保佐人には、被保佐人が行う重要な財産に関する行為について、同意権、取消権が与えられます。重要な財産に関する行為とは、たとえば借金、訴訟行為、相続の承認や放棄、新築や増改築等で法律で定められています。これらの行為を被保佐人が行うためには、保佐人の同意が必要となります。保佐人の同意なく被保佐人がこれらの行為を行った場合、取り消すことができ、同意を必要とする法律行為は、家庭裁判所の審判により追加することができます。また、家庭裁判所の審判により、特定の代理権を追加することもできます。

 

「補助の対象になる人」とは?

補助は、日常的な買い物等は一人でできるけれど、たとえば家を新築するなどの重要な財産行為について、一人で行うことが不可能ではないが適切に行えない恐れがあり、”他人の援助を受けたほうが安心である”というような方が対象です。補助人には、家庭裁判所の審判により、被補助人が行う、たとえば借金、訴訟行為、相続の承認や放棄、新築や増改築等、法律で定められた行為の一部について、同意権・取消権が与えられます。また、保佐人同様、家庭裁判所の審判により、特定の法律行為に対する代理権を追加することができます。

 

その他、成年後見の業務内容

本人の診療・療養介護・福祉サービスなどの利用契約の締結

本人の診療・療養介護・福祉サービスなどの利用契約の締結。本人の財産や収入を把握した上で、医療費や税金などの支払管理を行います。必要があれば、本人の介護サービス利用契約や診療、老人ホーム施設への入退所契約の代理も行います。

 

 

本人の預貯金や不動産などの財産管理

成年後見人は成年被後見人の財産(預貯金、不動産、生命保険など)を把握し、これを管理する”権利・義務”があります。具体的には、成年被後見人の財産について目録を作成し、その財産処理の内容を裁判所に定期的に報告するなどが仕事です。

 

成年後見人にできない業務内容

成年後見人の権限は財産管理行為に限られ、以下のような身分行為や本人意思が重要となる行為はできません。

 ・戸籍に関する契約の変更(婚姻・離婚・離縁・養子縁組・認知など)

 ・遺言書の作成

 ・医療行為(軽度の診察・緊急を要するものを除く)への同意

また、財産管理行為であっても不動産の処分など重要な取引行為については、裁判所の許可が必要となります。

 

成年後見制度を利用するメリット・デメリットは?

これは当たり前のことですが、どの法律や制度でも完璧なものはありません。成年後見制度にもメリットやデメリットがあります。制度を利用する前に必ず確認がひつようです!

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成年後見制度を利用するメリット

「法定後見制度を利用するメリット」は?

 ・家庭裁判所において適格と認められる者が成年後見人に選任される

 ・成年被後見人の財産管理を適切に行うことができる。

 ・成年被後見人の判断能力がなくなっても必要な取引を進めることができる。

 

法定後見制度を利用し、後見人になっておくことで財産などを管理・保護できるため、相続が発生した際にも財産把握が容易ということもあります。

 

「任意後見制度を利用するメリット」は?

上記に加えて任意後見人を選任するメリットは、被相続人が後見人が選べることです。また、複数の後見人を選びつつ、それぞれの役割・権限を分けることもできます。

 

成年後見制度を利用するデメリット

成年後見人を利用するデメリットは?というと、特にみあたりませんが、実際に活用されている方々から感じることは手続がとても煩雑であること。一度選任された場合に柔軟な対応や事実上の対応が難しくなる可能性が時々あることくらいです。

 

 

法定成年後見制度の利用方法は?

法定成年後見制度は、下記のような流れで進んでいきます。

1:家庭裁判所への申し立て

法定後見人を利用する場合、まず被後見人が住んでいる地域を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。申立てられるのは、「本人」「配偶者」「四親等内の親族」「弁護士などの法定代理人」のみです。

2:調査官による事実調査

申立て後に、本人・申立人・成年後見人の候補者が家庭裁判所に呼ばれ、調査官より事情を聞かれたり、候補者に対する意見を聞きます。 

3:選任の可否についての審判

家庭裁判所の判断により成年後見人が選任されます。審判に不服がある場合は、審判書受領後2週間以内に不服申立て(即時抗告)を行うことができます。なお、不服申立てを行った場合でも、必ずしも自身の希望に沿った後見人が選任されるとは限りません。 

4:通知と法定後見開始

裁判所から審判調書が送達され、これにより法定後見人選任の可否について知ることができます。また、成年後見開始の事実は登記されます。 

成年後見人は年に1度の頻度で財産目録と収支状況を家庭裁判所へ報告します。その際、報酬を請求することが可能です。 

5:成年後見業務が終了した場合

被後見人が死亡するなどして業務が終了した場合、申立てを行った裁判所へ業務終了報告書を財産目録とともに提出し、本人の財産の引渡しを行い終了です。その後は、各相続財産に合わせて相続手続きを行います。

 

 

任意後見制度の利用方法

任意後見制度は、以下のような流れで進みます。

1:交渉役場で公正証書を作成する

任意後見制度は、後見人と任意後見人になろうとする者の間で任意後見契約を締結します。この契約は公正証書で作成するため、最寄りの公証役場にで公正証書の作成依頼が必要です。

2:家庭裁判所へ申し立て

被後見人の判断能力が失われた場合、裁判所に任意後見制度の利用を申立てます。 

3:任意後見開始と監督人の選任

家庭裁判所が任意後見開始を認めると、任意後見人となろうとする者は任意後見人となり、同時に、任意後見監督人が家庭裁判所により選任されます。任意後見監督人は家庭裁判所が適格と認める者を選任しますので自由に選ぶことはできません。 

任意後見開始後は、任意後見人は職務内容について任意後見監督人に対して適宜報告することになります。 

4:任意後見業務が終了した場合

本人が死亡するなどして終了した場合、任意後見監督人に対して報告書と財産目録を提出して任務を終了します。

 

 

成年後見制度Q&A

Q1.成年後見制度を利用したい時は、どこへ相談すればいいの?

A1.家庭裁判所、市区町村の高齢者福祉課等、社会福祉協議会地域包括支援センター成年後見を業務とするNPO等、みなさんの周りには相談窓口が沢山あります。

Q2.成年後見の申立ては、誰がするの?

A2.本人、配偶者、四親等内の親族等です。場合によっては、市町村長が申し立てをすることもあります。

Q3.成年後見の申立てをするまでにしておく準備はありますか?

A3.以下の6項目が必要になります。

  1. 本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  2. 本人の住民票又は戸籍附表
  3. 後見人候補者の住民票又は戸籍附表
  4. 本人の診断書(家庭裁判所が定める様式のもの)
  5. 本人の「登記されていないことの証明書」
    成年被後見人被保佐人等に該当しないことの証明)
  6. 本人の財産に関する資料等
    (不動産登記事項証明書・預貯金及び有価証券の残高がわかる書類)

加えて、推定相続人となる親族について調査のうえ、全員に対し、本人に後見人等をつけることについて説明しておくことで後々のトラブルを避けることにも繋がります。 

Q4.後見人等を解任したい時はどうすればいいの?

A4.後見人に不正な行為、著しい不行跡、その他後見の任務に適しない事由がある時、家庭裁判所は、申立権者の請求、または職権により後見人等を解任することができます。申立権者とは、後見監督人、被後見人、被後見人の家族、検察官です。

 

まとめ

成年後見制度は判断能力が不十分な人の財産と権利を守る制度です

成年後見制度とは、被後見人の財産や健康を守るための制度です。任意後見にと法定後見人のでどちらを選択するかは慎重な判断が必要です。また、後見人等は、ただ単に被後見人等の財産を維持するだけではなく、被後見人の生活を維持、向上させるためにその財産を活用する必要もあります。その際は、本人の意思や自己決定権を尊重することが大切です。成年後見制度創設の理念を理解した上で、「本人の利益」の立場から利用を検討するようにして下さいね。😃

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