「特定援助対象者 法律相談援助」について解説します
高齢化社会の日本、最近良く聞くのが、認知症を患った方の様々なトラブルです。
認知機能が充分でなく、法的トラブルが起きていること自体を理解できずにいるケースが多くあります。
もし、身近なところで身内の方やご近所の方にそういったトラブルが起きかけていたら、あなたはどうしますか?
例えば、こんな時……
●督促状が家にたまっている(多重債務の疑い)
●布団や食品など同じものが大量に家にある(消費者詐欺の疑い)
●自宅の敷地内にやたらと物が散乱している(認知症状進行の疑い・近隣住民とのトラブルになる可能性)
など、法的トラブルが起きているかもしれないのにご本人は気付かずそのままになっている、そんな方を守る為の"法律相談"の制度があります。
「特定援助対象者 法律相談援助」です。
特定援助対象者 法律相談援助って?
少し、聞き慣れない言葉ですが、この制度は、ご本人(トラブルを抱えているかも知れない方)を支援する福祉機関の支援者の方(福祉事務所、社会福祉協議会、地域包括支援センターなどの職員)が申し込めば、法律相談が受けられる制度です。
支援者の方から申し込みをされると、担当地域の法テラスからご自宅や福祉施設まで弁護士さんや司法書士さんが出張で来てくれます。
みなさんが一番心配される相談費用に関しては、法テラスの資力基準を超えない方は相談料無料、超える方は5千5百円の負担で相談ができます。
ご本人やご家族が法律相談を希望される場合は、通常の法テラスの法律相談制度など他にご利用いただける制度がないか確認をしてくれます。詳しくはお近くの法テラスに問い合わせください。
いつから始まった制度?
平成30年1月24日より新たに始まった援助です
平成30年1月24日に改正、総合法律支援法が全面施行され,これにより,法テラスは,以下の「1・2」の新たな援助を行うことになりました。
1. 高齢者・障がい者等で認知機能が十分でない方に対する援助
(民事法律扶助の拡充)(改正総合法律支援法30条1項2号・3号)
○援助の特長
高齢者や障がい者等で認知機能が十分でない方は,法的問題を抱えていても,自ら法的サービスを受けるために行動することが難しい場合があります。そのため,「認知機能が十分でないために自己の権利の実現が妨げられているおそれのある方」(特定援助対象者)を対象とした,以下の①②の新たな援助が開始されました。
① 新たな「出張」法律相談援助
○対象
特定援助対象者であって,近隣に居住する親族がいないなどの理由により,法的サービスを
自発的に求めることが期待できない方
○内容
対象者を支援する地方公共団体,地域包括支援センター,社会福祉協議会等の職員の方からの法テラスへの申入れにより,弁護士や司法書士による出張法律相談を実施する制度です。
これまでの法律相談援助と異なり,資力のある方でもご利用可能です。ただし,一定の基準
を超える資力のある方には,相談料(5,500円)を負担していただきます。
② 弁護士費用等の立替対象の拡大
○対象
資力の乏しい特定援助対象者
○内容
弁護士費用等の立替援助の対象を,自立した生活を営むために必要とする公的給付に係る行政不服申立(※)に拡大しました。
※:例)生活保護法に基づく審査請求,介護保険法に基づく審査請求 など
2. DV等の被害者に対する法律相談援助(新設)(改正総合法律支援法30条1項5号)
○援助の特長
DV,ストーカー,児童虐待の被害は,深刻な再被害へ進展する危険が大きく,早い段階で弁護士による助言が必要な場合があります。
そのため,これらの被害を受けている方を対象とした,再被害の防止に必要な新たな法律相
談が開始されました。
○対象
DV・ストーカー・児童虐待(特定侵害行為)の被害を現に受けている疑いがあると認められる方。(代理の方による相談は対象外です。)
- DV…………
- 配偶者や事実上婚姻関係と同様の関係にある者等からの暴力などをいう。*配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律1条1項
- ストーカー…
- 特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情等を充足する目的で,つきまといなどの行為を行うことをいう。*ストーカー行為等の規制等に関する法律2条1項
- 児童虐待……
- 保護者がその監護する児童(18歳未満)に対し,暴力を加える,わいせつ行為をするなどの行為を行うことをいう。*児童虐待の防止等に関する法律2条
○内容
刑事に関するものも含め,再被害の防止に関して必要な法律相談を実施する制度です。資力のある方でもご利用可能です。ただし,一定の基準を超える資力のある方には,後日,相談料(5,400円)を負担していただきます。
まとめ
この制度で、支援機関の方から財産管理や相続の相談が多く寄せられ、それがきっかけでご本人の債務や成年後見の必要性がわかることも多く、弁護士と支援機関が協力しご本人の生活を立て直しています。
制度が導入され2年以上経ちます。最近は、導入当初に制度を説明していなかった支援機関から私たちの地域包括支援センターへ相談いただくことも多く、社会的ニーズを強く感じています。この制度が必要とされる方すべてに活用され、一層地域社会の役に立てるよう、今まで以上に周知活動を続けていこうと考えています。