こ〜たろ〜 の 「介護放浪記」

福祉・介護の世界で着のみ着のままに放浪中~!息抜き8割、本業2割、でなきゃ続けていけません…。

介護放浪記・season1 ④ Failure story(失敗談)・爪切り編


ケアワーカー(看護助手)の仕事を始めて2週間、患者さん30名の氏名も覚えた頃、午後からの業務で爪切りを担当した。

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誰でも自分の爪切りは経験あるだろうが、他人の爪を切るという経験は、子育て経験がある人以外はなかなかないと思う。

 

ましてや、子供などの身内ではなく、全くの赤の他人の爪切りとなると、医療従事者や福祉関連の仕事をしていなければ、そのような機会は先ずないだろう。

 

私自身、この仕事をやらなければ、人の爪を切るなんてことは、一生なかったかもしれない。

 

ということで、

 

1人目は、寝たきりのお婆ちゃん。(本当は患者さんと呼ばなければいけない)

 

全く動くことなく、全てのことに介助が必要な方だ。

 

声かけにもあまり反応がなく、目を開けることもほとんどない。

 

でも、ちゃんと聞こえていると思う。

 

爪切り用ニッパーや消毒液、ゴム手袋など必要物品を載せた台車を押してベッドサイドへ。

 

「◯◯さん!」

 

「起きてますか?」

 

「今から、爪を切らせていただきますね?」

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反応はないけど、聞こえているようだ。

 

「少し頭の方を上げさせて下さいね!」

 

ゆっくりとギャッジアップをする。(この時代は、ベッドの足元側の下にハンドルがあり、これを回してギャッジアップをする)

 

お婆ちゃんの左手の指から順番に爪を切り、ベッドの反対側へ回り右手の爪も。

 

ほとんど動かないお婆ちゃんの爪切りは、そんなに難しくない。

 

「◯◯さん!終わりましたよ!」

 

反応はないが、何となく表情が少し柔らかくなったような感じがする。(私個人の感想)

 

2人目、3人目と問題なく爪切りを終える。

 

会話のキャッチボールができる患者さんは、協力的なので助かる。

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4人目。

 

認知症状が進み、会話が成立しないお婆ちゃん。

 

とても明るく良く喋るが、話題は一瞬であっちこっちへ飛ぶ話題豊富な人だ。

 

入浴時も言葉では伝わらないので、本能的にお風呂が"怖いものではない"ということを五感へ働きかけ伝えていかないと暴れる。

 

流れ作業のお風呂タイムでは、着脱介助に形だけの声かけをする職員が担当すると、怖がって暴れていた。

 

早く入浴を進めたい職員とは裏腹に、"入浴"という言葉の意味が理解できない側からすれば、何か分からない言葉を言ってきて、いきなり服を脱がされ始めたら、そりゃ〜"怖い"と思うのが当たり前だ。

 

爪切りも然り。

 

何か分からないが、ニッコリ笑った人が自分の手をとり、キラキラ光る物で指先をいきなりバチンッ、パチンッと切り始め、指先に違和感のある刺激が伝わる。

 

爪切りを理解できなければ、指先に感じるこの刺激は心地よくない。

 

他の患者さんよりも導入部分に時間をかける。

 

優しく微笑みながらゆっくり近づく...

(私は怪しい者ではないよ...)

 

そっと優しく手をさする.,.

(私が触れることを受け入れてもらう)

 

指先などに触れながら、爪を触ることに慣れてもらう...

 

お婆ちゃんの話題豊富な会話を受けとめながら...

 

このようなことをじっくり積み重ね、そろそろ大丈夫かな?っという雰囲気になったところで、慌てず少しずつ始める。

 

パチンっ...

 

パチンっ...

 

順調に進み、左手が無事に終わった。

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さあ、右手...

 

ゆっくり、焦らずに...

 

パチンっ

 

パチンっ

 

親指、人差し指と順調に進む。

 

そして、中指の爪を切ろうと爪切りに力を入れた瞬間...

 

ガラガラガラ〜!

 

1人の看護師が勢い良く台車を押して病室へ入って来た!

 

「検温で〜す!」

 

びっくりして手を動かすお婆ちゃん。

 

動かすと同時にパチンっ!

 

爪切りが音をたてる!

 

「痛っ!」

 

リアルに反応するお婆ちゃん!

 

はっ!っと爪切りを引くと。

 

お婆ちゃんの中指の先からピューっと赤い細い糸が伸びるように血が吹き出した!

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(あっ!やばっ!)

 

漫画のように吹き出た血を見て、コンマ数秒だが眺めてしまった...

 

こんな風に血が吹き出ることあるんだ...

 

しかし、一瞬で我に戻ると

 

直ぐに中指を抑えて出血を止めにかかった。

 

吹き出る瞬間を見ていたさっきの看護師が、直ぐに近寄ってき処置をしてくれた。

 

「すみません。◯◯さん、大丈夫ですか?」

 

「申し訳ありませんでした」

 

パチンっとやってしまった一瞬だけ、本当に痛そうな表情になっていたが

 

看護師がバツが悪そうに処置をしてくれたあとは、ケロッとしていてもう忘れてしまったのか違う話をしている。

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改めて謝罪するが、お婆ちゃんには何のことか分からないようだった...。😓

 

う〜〜ん、いいんだか悪いんだか...😓

 

後日、面会に来られたご主人さんへ、再度謝罪をしました...🙇

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